INFORMATIONお知らせ

HOME お知らせ 総合お知らせ

お知らせ

「北信病院だより臨時増刊号」特集記事

2023年6月15日に北信総合病院・荒井裕国統括病院長は、3人の関連施設代表者と地域医療の未来について対談しました。その様子についてご紹介します。

超高齢化、人口減に負けない『地域医療の未来』

出席者
北信総合病院 統括院長  荒井 裕国

北信総合病院 院長  山嵜 正志

北信総合病院老人保健施設もえぎ 施設長  下山 丈人

北信総合病院附属北信州診療所 所長  曽根 進

Q.この4人で地域医療の未来について話し合おうと思った理由は?

荒井統括院長:救急・災害拠点病院として、また高度医療を提供する総合病院としての役割を担う北信総合病院の統括院長としての立場から、地域医療の現状を見ていくうちに、超高齢社会のニーズに対応 する老人保健施設もえぎの役割、人口減が続く中で地域医療を支える北信州診療所の現状が、日本の地域医療の『今の姿』を伝え、そこに生じている問題を浮き彫りにして、さらに問題解決のヒントが見つかるのではないかと考えたからです。

Q.荒井統括院長が北信総合病院に来た理由は?

荒井統括院長:私の前職は東京医科歯科大学病院の副病院長で、専門は心臓血管外科です。実は長野県厚生連の病院には、医者になって3年目に半年間ほど、佐久総合病院で研修医として、その後、1994 年から2000年までの6年間を北信総合病院の胸部心臓血管外科(当時)の科長として勤務しました。私にとって北信総合病院は特別な場所です。豊かな自然に恵まれた美しい山々の景色、おいしい空気と水、果物、温泉…ここは素晴らしい土地です。2000年に東京医科歯科大学医学部附属病院(当時)に戻る際に、いつかこの土地に移り住もうと心に決めて、2022年にそれが実現しました。心から嬉しく思っております。大学病院では22年間にわたり、最先端の心臓手術に携わってきましたが、私にとっての医療の原点は北信にあります。

Q.荒井統括院長との昔話や印象、3施設の現状と課題について教えてください

山嵜院長:私は北信総合病院に28年前、最初に赴任し、荒井先生にお会いしたときの写真を持っています。(と言いながら昔の写真を取り出す)

荒井統括院長:あぁ、恥ずかしい(笑)
山嵜先生もすごく若いですね。

下山施設長:荒井統括院長の姿は、『ビートたけしの TVタックル』で拝見していました。コロナ特集で出演されてワクチン問題などで話題になっていましたね(笑)。

荒井統括院長:ご覧になっていたんですね(笑)

2021年、テレビ朝日系列「ビートたけしのTVタックル」出演前のメイク室での様子

ビートたけしさん、東国原英夫さんと

曽根所長:私は静岡県浜松市の出身で、東京都内の医学部に通っていました。1985年~1986年に放送されていたNHKの大河ドラマ『いのち』の主人公で三田佳子さんが熱演していた津軽出身の岩田未希という女性医師が地域医療に取り組む姿に心を打たれたことが、今の道に進んだことに影響があります。もうひとつは、その当時、古民家ブームで、妻と『将来は古民家暮らしがしたいね …』と夢を描いていたこともあり、木島平の美しい田園風景と飯山周辺に残る太い柱が印象的な古民家群に感動して、この地で医者として働くことを決意しました。自然には恵まれていますが、やはり冬の厳しい寒さと大雪ゆえに、この地を去る人が多く、人口減少が止まらない状況です。また、若い方も少ないので高齢な方同士で助け合いながら生活をしています。

下山施設長:老人保健施設もえぎは、家に帰って生活することを支援する『在宅復帰』を前提として食事・入浴・排せつなどの身体介護、医師・看護師による 医療的管理、理学療法士などによるリハビリテーションなどを提供しています。入居期間も原則3か月となっていますが、いわゆる老々介護の家庭が多く、家に戻ってもしっかりと介護できる家族がいない…というのが大きな問題になっており、長期間の入居を希望するケースが増えています。軽度の認知症の方が重度の認知症の方の介護をするというケースもあります。

荒井統括院長:厳しい状況ですけど、それが現実なのですね…。

下山施設長:また、老健で働く介護福祉士が不足しているのも大きな問題です。

山嵜院長:現在の当院の状況は、慢性的に入院ベッド不足が続いています。またすでに始まっていて今後も増え続けると考えられる超高齢者の誤嚥性肺炎、心不全、骨折などの急性期診療にどう対応していくか…、さらにこれら疾患の緊急受診が増えると長期入院になりがちで、ベッドが不足する上に医師や看護スタッフへの負担が大きくなります。
また、拠点病院としてやっていくためにはある程度の医療機器を揃えていかなければならないのですが、医療機器も高額なので…。昨今の燃料費や医薬・医療品の値上げも病院経営をひっ迫しており、来年から始まる医師の働き方改革によって、医師の仕事を他のスタッフにシフトする際の人件費もかかるようになります。

荒井統括院長:山嵜先生は医師の働き方改革に関してリーダーシップをとって進めていらっしゃると思うのですが、その点は改善できそうでしょうか?

山嵜院長:残業時間だけでみると改善はできそうですが、それはあくまで数字上で、実際の医師の働き方は非常に過酷な面があります。やはり医師の献身的な精神で成り立っている部分が大きいです。しかしこうした働き方はなかなか変えられるものではないですし、変えようとするには医師の数を思いっきり増やすしかないです。もしくは少しでも負担を減らすという意味では、時間外に行われる会議をできるだけ時間内にしたり、時間を短くしたりすることもできると思います。

Q.3施設の現状と課題を聞いて、荒井統括院長の考えを教えてください

荒井統括院長:どの施設から見ても、地域医療に明るい兆しが見えない、本当に困った状況ですね。急速に進んだ少子高齢社会への対策として子育て支援策などを講じていますが、効果が出始めるのは恐らく20年以上経ってからで、それまではこの状況が続くわけです。医療機関は民間企業と違って、物価高騰だから医療費を値上げする…というわけにはいきません。だからこそ、今求められるのは、『変化に強い病院』ではないかと考えています。
その『変化に強い病院』でいうと、北信総合病院は地域住民を新型コロナウイルス感染症から守るために、この3年間、臨機応変に変化しながら闘ってきました。発熱外来では 15,000人以上を診察し、抗原・PCR検査は合計で約50,000件です。コロナ患者の受け入れについても、限られたベッドをやりくりしながら重点医療機関として最大30床の病床を確保し、陽性患者及び疑い患者合計900人超を受け入れました。ワクチン接種についても積極的に行い、地域住民のみならず、職員に対する接種も長野県で 最も早く取り組んだことで欠勤者を抑え、病院機能を維持することができました。最も身近な地域への貢献として設置した発熱コールセンターでの電話対応は月に1,000件を超えることもありました。電話対応には診療報酬は付かないので、全くのボランティアになりますが、大きな不安を抱えている発熱患者さんやそのご家族に対して、丁寧な対応をし、多く感謝の言葉をいただきました。コロナ感染症と闘うために病院が『変化』することで、力を発揮し、地域に貢献できました。

Q. 「団塊の世代」800万人全員が75歳以上、つまり後期高齢者となる2025年は目前に迫っており、認知症高齢者数、高齢者世帯数、年間死亡者数が増加し、それに伴い、ますます診療の負担が増加することになりますが、これについてはどうお考えですか?

山嵜院長:高齢者が増え続ける間は、医師の増員や設備の充実などが可能であれば当院の成長拡大はまだ見込めます。理想的には総合診療科を充実させて、外来のみでなく病棟や訪問診療まで対応できれば開業医のパワー不足も補えるようになります。院内においても総合診療科と専門性の高い診療科の棲み分けをしてお互いの負担軽減ができます。最近だと、この4月に糖尿病専門の先生が新たにいらっしゃいました。現在、糖尿病治療のニーズというのはどんどん増えてきています。基本的には開業医の先生に診ていただいて、困ったときに当院で相談にのったり、治療したりして、最終的には開業医の先生にお返しするという流れですが、今まではなかなかそれができていなかったです。

荒井統括院長:でも常勤の先生が入ったことで、その流れができるようになったということですよね。

山嵜院長:そうですね。そしてさらに必要なのは、救急科とその専門医を配置して救急医療を充実させることです。そのような体制が整えば、当院を希望する研修医も増える可能性があり、医師不足も解消します。
次に別の視点から今後を考えると、生産年齢人口の減少はすでに始まっていて、介護職中心に人手不足となり病棟が維持できなくなる可能性があります。医師以外のスタッフに関しても、病院間での再配分集約化が必要になることが予測されます。
さらに先を見ると2040年問題があります。これは高齢者を含めて全人口の減少が始まり、高齢者の割合のみが増加して、生産年齢人口が減り、必要な医療・介護・福祉サービスを提供できなくなる社会になることです。北信医療圏域は高齢化と人口流出がより進んでいるため、その状態は前倒しになる可能性が高いと思われます。その時に必要になるのは、『ダウンサイジング』 です。高額の医療機器や大きな施設の維持は困難となり、短期的な方針とは逆行して、高度急性期・急性期を縮小しつつ、回復期や療養、さらにお看取りまで自前で対応することで同規模を維持する可能性も出てくるわけです。

荒井統括院長:人口が減り始めていく一方で、最近の北信病院は常にベッドが満床の状態が続いているのはどうしてなのでしょう?

山嵜院長:ひとつは先ほど少し話が出たように、専門医を含め当院の医師が増えてきていているということです。あとは整形外科の影響が大きいです。最近では整形外科がどんどん充実してきていて、入院も増えています。

荒井統括院長:昨年から腰の手術も行えるようになりましたからね。 今まで扱っていなかった治療ができるようになっていることが要素の1つですね。

Q.山嵜院長のお話にあった、「介護人材不足」について教えてください

下山施設長:介護人材不足は目を覆うばかりです。介護福祉士に就職する人材自身が大変少なく、どの施設やサービス事業者でも奪い合いの状況で、当施設に関して、昨年度は介護福祉士の募集に対しての応募はありませんでした。

荒井統括院長:今の日本の状況やこの地域の状況をみたら、介護福祉士はとてもニーズがあると思うのですが…。

下山施設長:そうですね。介護福祉士の人材の拡大は高校での進路指導方針から変えていただく必要があると考えます。その一方で、各施設においては、介護福祉士の採用ではなく、最初は介護助手で採用し、介護の現場で働きながら介護福祉士を育てていく方向性しかないように思います。介護助手の採用も難しいかもしれませんが…。
また、当施設は開設当初の1996年 から勤務している40代後半の介護福祉士の割合が非常に高く、その職員が定年になる10年~15年後は非常に深刻な人材不足になることが予想されます。今から病院との人事交流を積極的に行うなどして、その対策をとることは必須と考えます。

Q.人口減少地域の現在の様子を教えてください

曽根所長:70歳近い訪問介護のヘルパーさんが、90歳の要介護者の介護に毎日訪問しているケースも稀ではなくなりました。結婚しなかった中高年の長男と高齢の母親だけの二人暮らしという世帯も多い印象です。冬になれば6~8 メートルの雪が積もり、訪問診療に行くことさえも困難になります。こんな状況から、この地域ではそう遠くない将来、コミュニティー自体の維持が難しくなると思われます。しかし、そのような地域から出ていけない人はそこに残り続けますし、そのような人たちにも医療は必要なのです。

荒井統括院長:70歳近いヘルパーさんが介護をする側というのは結構きついですね…。

Q.いくつかの課題が出てきましたが、荒井統括院長のご意見をお聞かせください

荒井統括院長:高齢社会以上に『人口減少』という社会のダウンサイジングこそが深刻な問題で、北信地方がその最先端を進んでいるのであれば、全国に向けて『地域創生の核となる病院のあるべき姿』を見せられるようにこれからの地域医療を展開していかなければなりません。そのためにも地域社会の医療ニーズを正しく理解し、変化する物事の焦点を見極め、従来のやり方に囚われることなく行動することが重要ですね。そして国や県に対しても、私たち医療者の声を届ける必要があります。それが統括院長としての責務だと感じています。

Q.病院の理想像についてお聞かせください

荒井統括院長:多くの診療科と高度医療機器を擁する当院は、国の地域医療構想の分類上は『多機能急性期病院』ですが、この地域には回復期や慢性期を診る病院が少なく、当院が回復期や慢性期の入院治療を行わねばなりません。診療所の数も限られているため、かかりつけ医としての機能も果たす必要があります。 つまり地域から求められている実際の使命は、『最先端の急性期医療から在宅ケアまで、さまざまなニーズに応じた幅広い医療を提供する病院』なのです。これは必ずしも国策と合致するものではありませんが、地域の求める北信総合病院らしくあるためには、今まで以上に地域の医師会や周辺医療機関、行政との連携を強く深めていくことが肝要で、地域ぐるみで地域医療構想に取り組んでいかねばなりません。老人保健施設もえぎは、入院生活と自宅での生活の橋渡し役として、介護対象の高齢者のリハビリや機能訓練を行いながら短期入所やデイケアを行なって、地域に貢献しています。北信州診療所は、地理的に本院から離れている飯山から新潟県境の栄村までの北信地方での最北端の地域の日常診療を担当し、高度医療が必要な患者さんの診療は本院とやりとりをしています。隣接する訪問看護ステーションなかの きたしなのサテライトとも連携して最北端豪雪地域の診療にあたっており、地域には欠くことのできない医療施設です。このように北信地方の医療・保健・福祉を担い、住民に安心と健康を提供できるのは、業態の異なる医療・介護施設が密接に連携することで成立しているからで、どれか一つでも欠けてしまってはならないのです。

Q. 2025年問題、2040年問題と、地域医療には難題が山積みされており、その山をどう越えるかが大きな課題ですが、明るい兆しとなるアイデアはありますか?

曽根所長:人口減少が進むなかで受診者を増やすことは困難ですし、診療日を減らすことは患者さんの利便性を大きく下げることになります。一般内科中心に、疾患にとらわれず急性期疾患等の初期治療、慢性疾患の外来診療、健康増進、予防活動を淡々と行なっています。また、訪問看護や介護サービススタッフとも連携して、在宅生活が円滑に進むように療養支援を行い、さらには通院困難な方への在宅診療も行なっています。診療所も開設して18年になるので、あちこち老朽化していますが、地域住民を一番明るくする言葉は、『この診療所はずっと続けるよ』というひと言だと思います。

山嵜院長:オンライン診療やAIの導入など、医療分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)によって、医師不足対策や人口減少地域での新たな医療提供体制構築なども可能性があると思います。また当院の南病棟、老人保健施設もえぎがそろそろ建て替えの時期で、超高齢社会、多死社会を見据えて、地域住民の医療ニーズの変化を予測して、それに対応できる施設づくりを進める必要があると思います。

荒井統括院長:10年先を見据えての建て替えというのは、とても難しいですよね。

下山施設長:山嵜院長の言うとおり、当施設は建設後27年が来ようとしており、再構築の時期が近づいています。当施設の将来を考えると、北信総合病院が南病棟を建て替える時にでも当施設を病院の敷地内に移転し、併設型の老健となることが必須かと考えます。併設型となることで病院の医師が兼任することが可能となり、食事も病院の栄養科から提供していただければ食事の外部委託費用も不要となります。職員や機材なども病院との共通化を図ることで定員減や費用減に繋がることが予想されます。

山嵜院長:あとは「介護人材不足」というのが非常に悩ましい問題ですが、最近では外国人スタッフの方も導入されているところがあるようですが、そういった予定はありますか?

下山施設長:今のところ予定はありませんが、近い将来、外国人スタッフの導入も必要になるかもしれません。そういった経験がないので導入には少し不安がありますが…。

荒井統括院長:大事なのは言葉じゃなくて「心」だからきっと大丈夫ですよ。

Q.荒井統括院長、最後に一言お願いします

荒井統括院長:医療は、病院で完結するものではなく、特に高齢化の進む北信地方では、退院後ないし通院をしつつ、自宅での介護が必要な患者さんがたくさんいます。老人保健施設もえぎも、北信州診療所も、併設する訪問看護ステーションなかの きたしなのサテライトも、人々の暮らしを成り立たせるために果たしている役割は大きく、地域社会の必要不可欠な医療インフラとしての存在意義があります。 3施設を統括する立場として、今後、行政への働きかけや、財源確保、地域の医療機関との連携強化を進めていく必要があることを改めて実感し、私自身も『変化に強いリーダー』であろうと心に誓いました。

荒井 裕国統括院長
絆(きずな): 座談会を通して、3施設の連携と絆が深まり、さらに良質の医療を提供できると思います。多職種連携、病院と周辺医療機関、地域社会、行政、医療従事者と患者、患者家族との絆…
地域医療を取り巻く数々の絆がつながりあってこそ、この地域に求められる医療が実現できると確信しています。

山嵜 正志院長
自業自得:よく見る四文字熟語で、失敗して痛い目に遭ったときなどに用いられますが、失敗の結果を他人のせいにしたり、言い訳をすることなく、自分で自分を振り返り、反省する姿勢を持ち続けることが、自分を成長させるのではないかと思いますし、努力は報われるともとれますので、大好きな言葉です。

下山 丈人施設長
疑問を持ち考えて変えていく:実は「何も変えない」方が簡単で楽な方法なのですが、それでは発展も成長もできません。成長するためには変わらなければならないもので、変わるためには、常に「これでいいのか?」、「どうすれば改善できるか?」と疑問を持ち、考えることが大切だと思います。

曽根 進所長
生まれ育った地で穏やかに暮らすお手伝いができるよう今後も頑張ってまいります:私自身が北信州診療所の患者さんに接しているときに、いつも心の中でささやいている言葉です。これからも健康相談窓口として気軽にご利用ください。

完成を祝して

完成した『北信総合病院だより臨時増刊号』をご覧になった座談会参加者の先生方に感想を伺いました。

荒井裕国先生
北信総合病院グループが、本院ともえぎ、そして北信州診療所の3施設の複合体であることを多くの人に知っていただきたい。そういう思いで、この企画を発案しました。3つの施設長の先生方が、皆さん謙虚で、普段はあまり口にはされないものの、さまざまな思いを抱えながら各々のお立場で地域医療に専念されている。その胸の内を窺い知ることができました。こんなにも地域医療のこと、施設を利用されている患者さんのこと、そして、そこで働くスタッフのこと、この地域の将来のことを我がことのように真摯に考えておられることに感銘いたしました。普段は物静かな先生方が、語り始めると、とめどなく医療への思いがあふれ出てきて、私が期待していた以上の素晴らしい座談会になったかと思います。また、宇山女史からの突然の色紙の提案など、話の引っ張り出しの巧みさにも感心しました。宇山女史とは、前職の東京医科歯科大学で多くのメディア対応でお世話になっておりましたが、今回の企画を進めるにあたり、遠く長野までお越しいただき、あらためて感謝申し上げます。
座談会での臨場感を保ちつつ、事前のアンケートと資料に基づいて内容が深まっていました。難しい課題でありながらも、全体を通して読み易い特集に仕上がったかと思います。
私ども北信総合病院グループが、業態の異なる3施設の複合体であってこそ、この地域の医療に貢献できることが、少しでもご理解いただければ幸いです。地域の皆様が、この地で生まれ、育ち、働き、そして老いてゆく。そのお手伝いをすることが私どもの使命であり、大きな人口変動の待ち受ける将来に向けて、地域の皆様が求める姿に変化し続けることのできる北信病院でありたい、と願っております。

山嵜正志先生
下山先生や曽根先生とは、普段仕事上身近に接することがありながらも、これほど腰を据えて北信病院について語り合うことはなかったのでとても良い機会でした。今回の内容は医療界のみではなく、大なり小なり日本中のどの業界にも当てはまる問題かと思います。歯止めがきかない少子高齢化と人口減少の時代の波に呑まれず生き残るために、その変化に柔軟に対応していくことの重要性をつくづく感じました。
何となく先の厳しい難しい話になってしまいましたが、病院の経営が健全に維持されることは、その地域の住民の一人一人の健康を守るだけではなく、住み良い街、住みたい街へとその社会全体の発展にもつながると思います。皆さまのご期待に添えますよう、ますます努力してまいります。

下山丈人先生
4人で座談会を行う企画を知らされたとき、はじめは少し大変だなと感じ、緊張しました。私以外の3名は医療の現場で働いておられるのに対し、私一人が介護現場の人間であり、話がかみ合うのかなと心配し、また、荒井統括院長は教授をされておられた方であり、どの程度のことまで話して良いものかと苦慮していました。
しかしながら、座談会の当日、荒井統括院長と宇山様が当施設を訪問され、討論会の企画運営を宇山様が行われることが解り、そして荒井統括院長と当施設で話をさせていただくうちに緊張感はほぐれていき、座談会への参加の意欲が向上しました。座談会の場面でも荒井統括院長が話を進めていただき、話の内容を決めて振っていただいたため、大変話しやすい環境でした。
また、突然の『色紙に書いてください』企画に関して、最初は初めてのことで大変戸惑いましたが、その人となりがよくわかる企画であり、すばらしい企画であったと今では思っています。
臨時増刊号を読ませていただき、座談会での発言を中心に、事前に書かせていただいた質問事項の内容を組み合わせて記事を作成され、その企画力と文章力はさすがだなと感じ、内容も素晴らしく、このような臨時増刊号を作成していただき大変感謝しております。また、当施設の広報誌なども熟読していただき、その中から記事を抜粋して挿入していただき、当施設の様子もより良く広報できたのではないかと思っております。この臨時創刊号を読んでいただくことで、今、介護現場が持っている介護人材の不足といった一面を広く一般の皆さまにもご理解していただくことができ、介護の将来に向けても大変良かった企画だったと考えております。       
今後も北信総合病院老人保健施設もえぎは皆さまにとってより良い施設として変わっていきたいと考えております。この臨時増刊号の内容でも結構ですし、それ以外の内容でも構いませんので、何か疑問や問題であること、改善してほしいことなど、どんなことでも我々にご教授いただければ幸いに思います。

編集後記

北信総合病院 広報課長 内田守道
記憶の中では「座談会」を広報誌で取り上げるのは病院でも初めての企画だと思います。「座談会を行いたい。」と荒井統括院長より要望があり、早速、広報課で企画と調整を行いました。そして開催目的を対面で説明させていただくことになりましたが、あの時の先生方のお顔、私もそうでしたが(笑)・・・「何か不安。」という感じでした。私は不安を感じさせず「何か不安。」から「何かが出来る。」という目的意識を明確にし、整えることが私の役目であり調整したつもりです。そのためにまずは事前アンケートを作成し、目的の明確化を行いました。先生方の回答はまさにリーダーでした。現状と課題、さらに訴えたいことが明確に伝わる回答と文章力で、圧倒されました。各リーダーが「何を思い、どう描いていくか」これは我々管理部課長も知っておく必要性から内容を共有させていただきました。
そして座談会当日、荒井統括院長の何気ない挨拶と会話から始まる和やかな雰囲気づくり、そして宇山様の存在感「誰なんだろう」から「どんな質問が出てくるのか、何をやらされるんだろう」というモヤモヤした雰囲気(笑)の中でも、私は4名のリーダーから強い連帯感と協調感と、先生方より「現状はこうです」「こうしたい」と多くの考えていることが共有され、共感され一体感が増したように感じます。
さらに宇山さん企画の連続。先生方が色紙に文字を書くという企画は当日知り、私も驚きでしたが、先生方が書いてくださった言葉や文字は強く感じるものがありました。進行と撮影も宇山さんには依頼しましたが、私たちが言ってもやってくれないだろうポーズも宇山さんの指示で「うやま だけに うやむやにせず」先生方にはやっていただけたことも今回の収穫でした。そんなシーンも今回の臨時増刊号では垣間見えます。そんな裏側も知っていただければ楽しく読めると思いますので、みなさんもぜひご覧ください。
臨時増刊号の表紙、文書構成、写真選び、配置など今までの当院の広報誌ではなかったものです。4月より広報課がスタートし、まだ3か月ですが、今回の臨時増刊号の発行は非常に良いスタートのきっかけとなりました。地域の皆さまにこれを読んでいただき、一緒に地域と地域医療の未来について考えていきたいと思います。 今後とも北信総合病院はじめ老人保健施設もえぎ、北信州診療所が地域の皆さまとともに安心して暮らせるための施設となるよう、広報課として院内、院外への情報発信と共有を続けながら、地域の皆さまとメッセージを繋げる役目を担ってまいりたいと考えております。今回の臨時増刊号のご意見、ご感想お待ちしております。よろしくお願いいたします。

北信総合病院 広報課 宮澤 咲希
広報課になって3か月目で開催となった座談会。4者で対談をしたいという荒井統括院長の要望から開催決定となったわけですが、今まで座談会を間近で聞く機会もなく、さらに東京から「あの方はすごいよ」と荒井統括院長が絶賛する方がお見えになるということで不安と緊張がすごかったです。今まで広報に全く携わってなく、まだ広報とは何か全くわからない状態の自分が、いきなりそんなすごい方とお話ししていいのか。座談会開催までどんな準備をしたらいいのか。病院トップが集まる場にそんな新人みたいな状態の自分がいていいのか。不安しかなかったです。
そして迎えた当日。宇山様の自己紹介と荒井統括院長の馴れ初めから話が始まり、違和感なく自然と座談会が始まりました。広報課でなければ聞くことができないような話の内容で、各施設からもさまざまな課題が出てきました。難しい内容もあったので、頭をフル回転させながら話を聞いていました。普段4人のリーダーが集まって話をする機会もあまりないので、それぞれの現状と課題、連携していくことの大切さが知ることができた座談会で、私自身とても勉強になりました。
そして出来上がった臨時増刊号見て驚きました。あの3時間近い座談会が、こういった形でわかりやすくまとまるのか…と圧倒されました。私も文字起こしをしましたが、なかなか自分の頭の中でまとまらなかったので、臨時増刊号を読んでスッキリしました。文字構成、デザイン、数々の作業を約1か月という鬼のようなスケジュールで進めてくださった宇山様には心から感謝申し上げます。
この臨時増刊号を読んで、3施設の現状や今抱えている課題を少しでも理解していただければと思います。そして北信総合病院はじめ、老人保健施設もえぎ、北信州診療所の3施設が、これからも地域の皆さまに寄り添っていけるようますます発展していければと思います。

医療ジャーナリスト・東京医科歯科大学特任教授 宇山恵子
「美味しい空気と美しい景色の中でゆっくり丁寧に臨時増刊号の制作を進めよう!」とうっとり…北信地方に魅了されて座談会を終えて東京に戻った2日後、「原稿はまだですか?!」というクールな電話とメールが来たところからドタバタな日々が続きました。3時間近い座談会の記事を2日後に完成させろという過酷な試練の上に、東京の仕事場である東京医科歯科大学病院では、TBS系の人気番組『情熱大陸』やNHK総合『ドキュメント72時間』、『ヒューマニエンス』、『チコちゃんに叱られる』などの撮影や取材調整、毎日数本あるテレビや新聞社の取材対応などもあり、泣きそうになりましたが…泣きたくなると火事場のバカ力が沸き上がって、「よっしゃ、負けないぞ~」と一気にスイッチが入り、予定よりも早く臨時増刊号を完成でき、「勝った~」と安堵しました。臨時増刊号は、従来のテイストとは違うもので…という思惑もあり、ビジネス雑誌のような表紙で、スッキリ整ったレイアウトを考え、3つの異なる役割を担うリーダーが、それぞれの持ち場でどんな問題を抱えて、何が解決策になるかについて、地域の皆さんに考えてもらえるようにしました。座談会の最後に、一言の予告もなく無茶ぶりでお願いした色紙にも、さらさらと個性的で素敵な言葉を書いてくださいました。この4枚の色紙のおかげで、「ムムム、このオジサンたち、何を書いているんだ?!」と、誌面でもHPでも注目度が上がると思います。
俳優やタレント、スポーツ選手などのインタビューよりも、医療現場の様子を伝える広報や編集の仕事が大好きで、カメラ、PC、スマホ、ペン、メモ帳、ICレコーダーを持って病院から病院へ、東奔西走していますが、今回の仕事で東京、大阪、名古屋、仙台、福岡などの大都市では見えなかった医療の未来が抱える問題が、よりくっきりと見えました。制作を進めながら、学ぶことが多く、北信の人や自然に触れてとてもいい気分転換にもなりました。
「南に向きて北斗を見る」…北斗七星は北の空を見て探すのが常識だが、固定観念や常識を破って南を見ると解決策が見出せるものだ、という禅語を思い出しましたので、一筆啓上仕り候。